関係者様

日中はだいぶ春めいてまいりました。良い季節到来かと思えば、花粉症で
お悩みの方もいらっしゃることでしょう。

では、山崎通信をお届けいたします。
皆様のご意見やご感想も是非お寄せいただければと思います。
お知り合いの方にも、このメールを転送いただければ幸いです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
____山__崎__通__信_______________2008.3.12_
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃日銀よ、金融緩和せよ
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《総裁ポストを政争の具にするという大愚》

 主要国やEU(欧州連合)の中央銀行総裁は、世界経済に最も大きな影響を
 与える人たちです。

 21世紀になって中央銀行の重要性はさらに増しています。株式や債券などの
 証券はもちろん、不動産や石油やトウモロコシといった実物資産までが市場
 商品となり、世界中で売り買いがされるようになっているからです。

 さらに、そうした市場経済への参加者自体が増えています。中国、インド、
 ロシア、ブラジルなどの大国が世界の資本主義経済のメンバーになり、中東
 やベネズエラ、ナイジェリア、カザフスタンなどの国も資源のパワーをさらに
 発揮するようになりました。

《日銀総裁の任務を厄介にする2つの要因》
 市場経済は借金で動きます。金融機関はもちろん、ファンドや企業も自己資
 本以上に借り入れることによってポジションを膨らませます。当然、金利が安
 く為替が下落しそうな通貨での借り入れに人気があります。

 一番の人気通貨は、金利が低い円でした。このことが、日銀総裁の任務を
 とても厄介なものにしています。世界の市場投資への貸し手の立場に立って
 いるからです。

 金利水準が一定であっても、円高が急激に進むと円で借りて世界の市場に
 投資している人たちの投資採算が急激に悪化し、それがポジションの投げを
 誘発してマーケットのメルトダウンを誘発しかねないからです。

 日銀総裁のもう1つの難しさは、為替への対応です。日本経済は為替経済と
 言っていいでしょう。これは、米国経済が消費経済だと言うのと同じ意味合い
 です。つまり、経済の動向に大きな影響を与えるのは、日本では為替水準で
 あり米国では国内消費だということです。

《円高、そして市場の下落を招いた日米金融政策の変化》
 昨年の夏ごろに1ドルは120円を超えていました。それが昨週末には100円割
 れ寸前まで円高が進みました。いつ100円を切る円高になってもおかしくあり
 ません。輸出企業にしてみれば、売り上げをドルで受け取っても半年前より
 2割近くも収入が減ることを意味します。

 もちろん、これまでに多くの日本企業は様々な為替対策を進めていますから、
 ここまで極端な影響は出ませんが、それでも円高で日本の企業収益全体に
 は悪影響が出ます。

 それを素直に表しているのが株式市場です。昨年8月からの円高とほぼ同じ
 ペースで株安が進行しています。1月22日を上回る二番底が、いつ来てもお
 かしくないところまで来ました。

 ドルに対して極端な円高が進行している主な原因は、日米の金融政策の相
 対関係が大きく変化していることです。為替はゼロサムゲームであり、2国間
 の相対的な経済関係が大きな影響を持つからです。米国は、サブプライム
 ローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の発生を当初は楽観しました
 が、今年に入って1週間あまりで1.25%という大幅な金利引き下げを行いまし
 た。

 一方で、昨年来、日銀は金融緩和を行っていないために、相対的にいって
 日本が対米では引き締めとなり円高の流れを作り、それが、企業収益という
 ルートから国内株式市場を低下させ、市場での円資金調達の縮小を通じて
 世界市場の下落を誘発しました。

《日本の景気悪化リスクを高めるな》
 日銀の選択肢は狭まっています。金利の低下あるいは量的緩和の復活など
 を通じて、金融緩和の明確な姿勢を示さなければ、円高と株式、さらには不
 動産市場の下落を通じて、日本の景気が一層悪化するリスクを高めること
 になります。

 そんな中、日銀の司令塔であるはずの総裁のポストが政争の具になってい
 ます。あえて言えば、総理大臣よりも経済への影響が大きいポジションが、
 能力や識見以外の要素で決まるとしたら恐ろしいことです。

 なぜ、政府は福井総裁が辞任する直前まで、新総裁を提案しなかったので
 しょうか。少なくとも1ヶ月はかけて議論すべき重要な人事です。ぎりぎりの
 タイミングで提案し、日本経済を人質にして合意を迫る手法は、道路予算の
 審議にも通じます。

 一方の野党も、総裁候補である武藤副総裁の過去5年間の実績に、焦点を
 絞るべきでしょう。これまでの金融政策の検証なくして、その責任者の一人
 である武藤副総裁の適否は判断出来ないはずです。中央銀行総裁にとって、
 出身よりも識見と行動力が大事なことは、米国でも日本でも変わらないはず
 です。

 当然、国会の審議は専門性と客観性が要求され、候補者の人格が尊重され
 なくてはいけません。また、メディアでの報道も同様です。

 そう言うと、こんなふうに怒られそうです。

 「日本の現実を見てみろ。パフォーマンスとワイドショーで物事が決まる。
 誰を日銀総裁にするか公開の場で議論したら、イケメンじゃないと日銀総裁
 にはなれなくなるぞ。」

 こんな暴論も、一定の説得力を持ちかねないのが今の日本ではないでしょう
 か。

 国民の生活にも国家の財政にも大きな影響を与える日銀総裁の人事を、
 国会がきちんと議論することが大切です。国家としての知恵が欲しいところ
 です。知恵が出てこなければ、市場に見透かされ、日銀そのものがリスクの
 種になりかねません。


◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃新しい本が発売になります。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 3月14日、新しい本が発売になります。
 『道路問題を解く−ガソリン税、道路財源、高速道路の答え』
  ダイヤモンド社 定価1,575円(税込み)
  http://g.ab0.jp/g.php/3qXJ30XpS9t41gwUeU

 衆議院での道路予算の審議がひと月もたたずに終わりました。今年度の
 審議は、今後10年間の道路財源の方向を左右するものです。

 それなのに、審議日程が全く足りません。56年前に田中角栄議員が100日
 も答弁して議員立法で作った道路特定財源のあり方を、数回の審議と強行
 採決で決めるのです。そんなことでは、財政だけでなく、日本経済も再生の
 チャンスを失います。

 この道路問題から見えてくるのは、日本全体の病んだ姿です。
 ガソリン税は高い? 安い?
 道路財源は一般財源化すべき? すべきでない?
 道路は足りない? 足りている?
 高速道路は有料? 無料?
 高速道路の借金は返せる? 返せない?

 道路問題を解くことは、日本を立て直すことに通じます。
 終戦直後に作られた道路の仕組みを改めて、日本をもう一度元気にしましょ
 う。それが出来るのは今しかないのです。

 この本が、今の日本が抱える問題について皆様が考える際のヒントになれば
 幸いです。また、ご意見・ご感想をお寄せいただければと思います。


 ●次号は来週にお届けいたします。どうぞお楽しみに!
 ………………………………………………………………………………………
 ★メールアドレスの変更をご希望の方、またメールをご不要な方は、
  下記URLよりお手続きをお願いいたします。
 ◇メールアドレス変更 : http://www.yamazaki-online.jp/change.html
 ◇メールマガジン解除 : http://www.yamazaki-online.jp/stop.html

 ★また『山崎オンライン』上でも、随時、変更・停止手続き可能です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
──●          山崎オンライン事務局
─■⌒■───────────────────────────────
      http://www.yamazaki-online.jp/
      E-mail: yyonline@yyoffice.co.jp

○出所の明記をする限り、転送・転載は自由です(ご連絡頂ければ幸いです)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━