関係者様

例年より早く花見の好季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

では、山崎通信をお届けいたします。
皆様のご意見やご感想も是非お寄せいただければと思います。
お知り合いの方にも、このメールを転送いただければ幸いです。

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____山__崎__通__信_______________2008.3.28_
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┃世界経済悲観論に踊るなかれ
┃         〜“バーナンキ暴落”は終わり、株は上昇を開始する
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 「私は世界一幸せ」「オレほど不幸なやつはいない」
 「世界の中心で愛を叫ぶ」――。
 こんなふうに、自分を中心に世界が回っていると思うのは、人間の特権です。
 だから美しい誤解や恋が生まれるのであり、おかげで人類は増え続けたのか
 もしれません。

 自分中心の強い思い込みだけで世の中を語るというのは、人間の特性なの
 でしょう。今年に入ってからの世界経済悲観論を聞いていると、そう思えてな
 りません。

《ノーベル賞受賞者も悲観論にお墨付き》
 経済の実態を冷静に観察すれば、悲観論が過大であり、世界恐慌もスタグ
 フレーションも起きていないことは明白です。

 ところが、日本のメディアはしきりに不安を煽り立てます。そればかりではあ
 りません。外国の偉い経済学者の先生たちの多くも大悲観派です。

 ノーベル経済学者のスティグリッツ教授によれば、米国経済は戦前の大恐
 慌以来のひどい状態になるそうです。ハーバード大学のフェルドシュタイン
 教授によれば、戦後最悪の不況に突入するそうです。

 そんな中で今年1月末、当コラムで「バーナンキ暴落は終わりに向かう」など
 と書いた筆者は全くの少数派です。それでもあえて言わざるを得ません。
 米国株式のバーナンキ暴落は収束に向かい、世界経済は緩やかな成長軌
 道に戻るでしょう。そして、世界の株式市場は上昇に転ずるでしょう。

 もちろん、米国の不動産の低迷は今後2〜3年は続くでしょう。経済もゼロ成
 長になるかもしれません。欧州でも、不動産と金融機関の経営は悪化する
 でしょう。

 しかし、そうした悪化を既に織り込んでここまで下げた株式市場は、今年に
 も上昇を開始する可能性が大いにあります。過度な悲観に踊らされたら、
 方向を誤るでしょう。

《石油ショック時に比べれば好況とさえ言える》
 確かに、毎日のニュースだけ見れば、悲観材料には事欠きません。
 証券化業務で最大手のベアー・スターンズ証券の経営危機、サブプライム
 ローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)問題から他の分野に損失
 が拡大を続ける米国の金融機関、とどまるところを知らない石油価格の上
 昇、米国株以上に下落を続ける日本やアジアの株式、12年ぶりに1ドル100
 円を割るドル安と円高不況の足音。

 しかし、銀行と企業の連鎖倒産が全国に広がり米国中に失業者があふれ、
 世界に飛び火して第2次大戦にまで至った大恐慌のような事態は起きてい
 ません。石油ショックの時のように日本のインフレ率が20%を超えることに
 もなっていません。世界経済への損害ははるかに軽微です。

 戦前の大恐慌では、米国のダウ平均が約80%も低下し失業率が25%に上
 り、世界の貿易体制が崩れ、ワイマール共和国が崩壊し、第2次大戦につ
 ながりました。

 石油ショックが起き、1974年の日本のインフレ率は23%に跳ね上がり、戦
 後初のマイナス成長を記録しました。そして、米国の失業率は9%に上りま
 した。

 昨年12月に発表された2008年の世界経済の成長見通しは、OECD(経済
 協力開発機構)の予想では2.3%でした。日本のインフレ率は現在前年比
 0.8%、米国は4%です。

 米国の失業率は上昇したとはいえ5%前後であり、1970年代に自然失業と
 か完全雇用状態とか言っていた水準にすぎません。米国経済でさえ、大恐
 慌はもちろん、石油ショックの時代と比べたら好況とさえ言えるレベルなの
 です。

《サブプライム問題よりはるかに大きな損失を出した》
 1989年から93年末まで続いた世界同時の不動産バブル崩壊の時代に比
 べても、今のサブプライム問題が世界経済全体に及ぼしている影響は軽い
 ものです。(日本だけが、この時のバブル崩壊から抜け出すのにさらに10年
 以上かかりました)

 1989年から始まった米国での不動産暴落の起源は、70年代の預金金利規
 制の撤廃と20%に迫った短期金利にまでさかのぼります。こうした環境に
 よって70年代から経営危機に陥った住宅専門のS&L(貯蓄貸付組合)業
 界を救済するために、80年代に不動産業務の大幅な規制緩和が行われま
 した。それによって、各地で野放図な商業不動産開発が始まりました。
 そこに大手不動産会社や大手銀行や保険会社や日本の投資家までが参
 加して出来上がった不動産バブルが、80年代末から破裂したのでした。

 その結果、全米の住宅金融を支えていたS&Lの半数以上がなくなり、政府
 は80兆円の公的資金を投入し、そのうち10兆円以上が損失になりました。
 一世を風靡したオリンピア&ヨークなどの大手不動産会社も消えてなくなり
 ました。

 大手銀行も大きな打撃を受けました。マニュファクチュアラーズ・ハノーバー
 などの名門銀行が消え、シティバンクやJPモルガンなども大きな損失を出
 しました。

 もちろん、そうして失われた企業の自己資本、株式の時価総額は、GDP(国
 内総生産)に対して今のサブプライム問題よりもはるかに大きなものでした。

 不動産不況は93年末まで続き、FRB(米連邦準備理事会)は政策金利であ
 るFF(フェデラルファンド)金利を89年の9.75%から92年には3.00%にまで
 低下させました。しかし、この時でさえダウ平均は90年10月に大底をつけ、
 そこから93年末までに6割も上昇しています。不況になったからといって株を
 手放した人は絶好の投資機会を逸しました。

《損失の吸収能力を高めた米国経済》
 今、こうした歴史の比較を踏まえた報道にはなかなかお目にかかれません。

 ここで申し上げているのは、不動産問題としてのサブプライム問題が、89年
 から93年までのバブル崩壊より小さいということではありません。
 当時に比べて、米国経済の相対的な体力が飛躍的に向上しているがゆえに、
 損失の吸収能力が高いというのがポイントです。

 その根源には、「米中経済同盟」を中心とし、かつての共産圏や途上国が世
 界経済のメジャープレーヤーとなり、労働と不動産と金利コストを大幅に低
 下させ、企業収益を大幅に向上させ、それが世界展開をする米国の大企業
 と金融機関を富ませているからです。(こうした構造については、拙著『米中
 経済同盟を知らない日本人』をご参照ください)

 80年代末の米国経済は、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代の直後で、日
 本が最大の資金源である時代でした。しかし、いまや、中東、中国、インド、
 ロシア、シンガポールなどの資金が米国の民間金融機関やファンドに流れ
 込みます。

 かつての双子の赤字の米国は、今では、所得収支の黒字国に変わりました。
 ました。資金があるのです。その何よりの証拠が、3%台にまで低下した米
 国債の金利です。米国経済が崩壊するのであれば、こんな低金利は許容さ
 れません。

《FRBの豹変に反応しなかった日本》
 今の米国の金融と不動産問題の根源は、民間が資金余剰であるがゆえに、
 財政資金の注入を政治責任の回避のために躊躇し、問題解決を遅らせて
 いることにあります。つまり、贅沢な話なのです。

 そのために、金融緩和に全面的に依存した解決策を取るはずでした。
 ところが、去年8月からの株式とドルの暴落への金融当局の初動が悪く、
 連続暴落を招きました。だから、FRB議長の名を冠し「バーナンキ暴落」と
 私は名づけました。

 ところが、今年に入り、前任のグリーンスパン時代にも見られない大幅な金
 融緩和を実施し、かつ、ベアー・スターンズ証券への緊急融資まで実行し、
 FRBは全速力で金融緩和を実現しています。

 今年から豹変したFRBのスピードに全く反応しなかった日本の金融政策が、
 12年ぶりの1ドル100円割れと米国以上の日本株の暴落を招きました。
 今度は「日銀暴落」が起きたのです。私が、日銀総裁選びで混乱するのでは
 なく、日本は断固たる金融緩和を行うべき、と主張するのもそのためです。

 行動が遅れるほど、日本経済は不況の色合いを濃くするでしょう。
 サブプライムローン問題に巻き込まれなかったはずの日本が、米国以上の
 経済悪化の被害を受けてしまうでしょう。


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┃新しい本が発売になりました。
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 新しい本が発売になりました。
 『道路問題を解く−ガソリン税、道路財源、高速道路の答え』
  ダイヤモンド社 定価1,575円(税込み)
  http://g.ab0.jp/g.php/4fpQM7O4QdoW1gwUeU

 この道路問題から見えてくるのは、日本全体の病んだ姿です。
 道路問題を解くことは、日本を立て直すことに通じます。
 終戦直後に作られた道路の仕組みを改めて、日本をもう一度元気にしましょ
 う。それが出来るのは今しかないのです。

 この本が、今の日本が抱える問題について皆様が考える際のヒントになれば
 幸いです。また、ご意見・ご感想をお寄せいただければと思います。


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┃その他メディアでも取り上げていただいています
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 ☆週刊ダイヤモンド 2008年3月22日号
 「高速道路の無料開放が日本経済を活性化する」
 
 ☆アルファブロガー小飼弾さんのブログで、上記ダイヤモンドの記事と拙著を
 取り上げていただいています。
  http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51018903.html


 ●次号は来週にお届けいたします。どうぞお楽しみに!
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