関係者様

春たけなわの折から、皆様お元気でいらっしゃいますでしょうか。

では、山崎通信をお届けいたします。
皆様のご意見やご感想も是非お寄せいただければと思います。
お知り合いの方にも、このメールを転送いただければ幸いです。

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____山__崎__通__信_______________2008.4.3_
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┃新銀行東京に見る“お上”の甘さ
┃           〜銀行だけに依存しない複線型の金融システムを
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 新銀行東京のずさんな実態が明らかになってきました。それにもかかわら
 ず、東京都は新たに400億円の追加出資を決めました。

 都民や国民の負担をこれ以上拡大することなく、即刻業務を停止し、清算
 すべきです。

《戦後これほどまで失敗した銀行はない》
 それにしても、新銀行東京の経営実態はお粗末そのものです。2003年に
 石原慎太郎都知事が「東京発金融改革」を高らかに宣言し、2005年4月に
 開業しました。

 会社設立(2004年4月)からわずか4年間の累積損失は、公表されているだ
 けで、なんと1,260億円にも上ります。収益を稼ぐはずの貸出金は、昨年9月
 中間期の決算短信によればわずか2,218億円しかありません。
 つまり、貸し出しの半分に相当する金額が累積損失になっています。
 異常としか言いようがありません。

 一方で、市場平均の3倍もの高金利で集めた預金が4,284億円、負債全体で
 は6,104億円に上ります。そして、純資産は219億円しかありません。負債の
 わずか3.6%です。純資産が底を突きそうだから、追加出資が必要という
 わけです。

 戦後、新しい銀行が、これほどまでに失敗した例はありません。

《無担保・無保証ビジネスはコストがかかる》
 新銀行東京のビジネスモデルそのものが成り立たないと思われます。
 貸し付けて収入を稼ぐ中心は、中小企業への無担保・無保証の融資です。
 最もリスクの高いタイプの融資です。

 ところが、その多くは実質審査なしで書面だけで貸し付けが行われたことが
 明らかになってきました。また、規模に対してシステム投資や営業経費も過
 大なために構造的に損失が出ています。

 無担保・無保証の事業者への貸し付けというビジネスは、これまでノンバン
 クや消費者金融が担ってきました。民間の業界は、信用審査や回収に様々
 な努力を払ってきました。もちろん、その中には違法性の高いものや社会
 的に問題のあるものもあり、批判を受けてきました。

 しかし、厳然たる事実は、無担保・無保証というハイリスクのビジネスは審
 査と回収が最も難しく、コストのかかる融資であるということです。

 小さな企業の経営者が利用者の中に多いとされる消費者ローンの業界は、
 最高裁の判決以来、上限金利の引き下げと過去の過払い分の返還によっ
 て、大きな損失を計上し、撤退する企業が続出しました。

 借り入れが困難な借り手の中には、ヤミ金融に走る人も多いと推察されま
 す。貸し手にも借り手にも厳しいビジネスです。

 しかし、新銀行東京のように、ほとんどまともに審査も回収努力もせずに
 お金を貸せば、その多くが返ってこないのです。

《破綻した民間銀行の経営者は刑事責任を追及された》
 そのうえ、新銀行東京では、元役員の友人が経営する会社に3億円もの融
 資を行ったものの、その会社は2カ月後に破綻、融資が焦げ付いたことも
 報道されています。友人だから審査をしなかった趣旨のことを、元役員は
 述べているといいます。これが事実であれば背任行為に当たるのではない
 でしょうか。

 石原都知事は、「東京発金融改革」を行うとして新銀行東京を始めました。
 しかし、民間銀行は、石原知事が改革を宣言した2003年6月のりそな銀行
 への公的資金の注入を境に、ようやく不良債権の処理に踏み切り、経営の
 健全化の道を歩み始めました。

 そして、公的資金の注入を受けたところをはじめとして、金融機関の多くは
 金融庁の厳重な監督下に置かれ、経営内容の詳細なチェックを受けていま
 す。また、日本長期信用銀行や日本債券信用銀行など、破綻した銀行の
 経営者は厳しく刑事責任を追及されました。

 そうした深い傷を負いながらも、ようやく日本の銀行は経営健全化に向かっ
 ています。

 ところが、新銀行東京は、バブル期の民間銀行にも見られないような、放
 漫で無責任な経営で貴重な財政資金を浪費し、さらに、破綻が確実である
 にもかかわらず、なおも財政資金を投入して延命措置を図ろうとしている
 のです。バブル崩壊の教訓を全く生かしていないと言えるでしょう。

 これほど問題が明らかな銀行であるにもかかわらず、銀行を監督する立場
 の金融庁も、不正を追及するはずの刑事当局も、新銀行東京への検査や
 捜査を行っていません。石原知事の威光のせいでしょうか。民間金融機関
 に比べて、著しく甘いと言わざるを得ません。

 しかしここは、都民の負担を軽くし、正義を実現するためにも、関係機関は
 公の義務を果たす時でしょう。

 さらに、新銀行東京以外にも、石原都知事のイニシアティブによって始まっ
 た事業からの損失が、民間分も含めれば1兆円近くに上ると報道されました。
 事実であれば、民間の常識で言えば、トップの辞任は避けられないでしょう。

《金融の2極分化という問題は残ったまま》
 ただ、日本の金融の2極分化という問題は、新銀行東京が撤退しても課題と
 して残ったままです。2極分化とは、優良上場大企業などは超低金利の資金
 調達が出来る一方、担保や資産が十分でない多くの新興企業や中小企業は
 きわめて高い金利での借り入れしか出来ないという問題です。

 貸し出しリスクと金利がなだらかな曲線を描くのではなく、一定以上のリスク
 を持った借り手の金利が大きくはね上がってしまうのです。

 資産や担保が不足する借り手の中でも、事業から判断して、比較的優良な
 借り手と不良な借り手を区別する機能が、日本の金融市場に発達していな
 いのです。

 欧米では、貸し出しリスクを市場化することで、貸し出しリスクの分類でミド
 ルマーケットを作ることが行われてきました。

 1つは、1980年代から盛んになったジャンクボンドと呼ばれる低格付けの社
 債市場です。もう1つは、規格化された小口のローンを集めてプール化し、
 大規模にしてさらに細分化する証券化の手法です。

 ただし、証券化は担保金融が中心になりますから資産金融の分野で使わ
 れます。売掛金や事業収入などを担保にすることで企業が利用します。

《金融環境が落ち着けばミドルマーケットは復活する》
 こうした市場化の手法にも限界があります。金利環境や担い手となる金融
 機関の経営状態に影響されることです。低金利では市場は拡大しますが、
 金融引き締めや株式・金融市場の下落によって、市場への資金供給が細
 り、また担い手となる金融機関の経営危機によって市場機能が麻痺するこ
 ともあります。

 米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題から損
 失と問題が拡大する証券化市場が、今まさにそうした困難な局面にありま
 す。

 しばらくは証券化悪者論が幅を利かせるでしょう。過去にも、金利引き締め
 局面で、ジャンクボンド市場の大幅下落が観察されてきました。

 しかし、金融環境が落ち着けば、そうした市場化されたミドルマーケットは
 復活してきました。そして、借り手の企業はもちろん、貸し手の銀行もバラ
 ンスシートのスリム化や経営効率の改善などのためにそうした市場化され
 たミドルマーケットを利用してきました。

 新銀行東京の失敗を教訓に、情報の市場化と、きちんとした市場機能の
 担い手という観点から、日本でも市場化されたミドルマーケットの構築に
 向けた努力を始めることが大事だと思います。

 銀行貸し付けに依存する単線型の金融システムから、市場機能が補完す
 る複線型のシステムに変えていくことで、日本の金融機能は強化されるで
 しょう。

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 幸いです。また、ご意見・ご感想をお寄せいただければと思います。


 ●次号は来週にお届けいたします。どうぞお楽しみに!
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