関係者様

昨日に引き続き、山崎通信をお届けいたします。

皆様のご意見やご感想も是非お寄せいただければと思います。
お知り合いの方にも、このメールを転送いただければ幸いです。

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____山__崎__通__信_______________2008.9.17_
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┃地方からの経済改革なくして長期政権はない
┃             〜日本で政権の運命を決めるもの(後編)
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 昨日の山崎通信では、安倍晋三・福田康夫の両政権が倒れた理由について、
 小泉純一郎改革までさかのぼって考えてみました。

 21世紀の世界経済の環境変化に対応することができず、欧米諸国に周回
 以上の後れを取っている日本のことを考えると、暗澹たる思いになるのは
 確かです。しかし、日本には計り知れないほどの潜在力があることを
 忘れてはいけません。この潜在力を十分に生かす政策を実行することが、
 新しい政権には求められているのです。

《180度、発想を転換した政策が必要》
 日本の潜在力の中で最も重要なのは、人類が生き延びるために必要な、
 太陽光発電、リチウム電池、電気自動車といった自然エネルギーを活用する
 などした技術です。資源リサイクル、ナノテク、海水淡水化、砂漠緑化と
 いった環境技術などでも日本は世界の先頭にいます。

 そして、変化に富み、自然と歴史の遺産に恵まれた国土の豊かさにもっと
 目を向けるべきです。日本の地方各地には、最高の食とおもてなしの心、
 美を紡ぎだす匠の技があります。

 それだけではありません。マンガとアニメを中心にして、世界中の
 “子供心”への強い発信力もあります。

 このように、優れた技術があり、世界に誇るべき資産が日本各地に眠って
 いるというのに、太平洋ベルト地帯と東京だけが日本の中心であり、
 地方には希望はない――。そんな考えばかりが蔓延しています。こんな
 状況で改革をいくら叫んでも、日本経済の再生は遠のくばかりです。

 東京以外の地方から日本の成長を促す必要があります。そのためには、
 180度頭を切り替えた政策を実行しなければなりません。そうでない限り、
 日本経済の低迷は終わらないでしょう。

 そのための最低の条件として、先進国の常識である高速道路の原則
 無料化くらい実行するのは当たり前のことです。

《無料の高速道路網がもたらす効果は歴史が証明済み》
 今のうちに赤字路線の借金を国が返済しなければ、超低金利時代が
 終わった時に借金返済が不可能になるという現実問題からいっても、
 ほかに合理的な選択肢はありません。

 往復6000円の東京湾アクアラインや、往復1万円の本四架橋が無料に
 なって初めて、大都市圏からのリロケーションが始まり、やがてその
 動きが全国に広がるでしょう。日本の国土利用とその見直しが始まり、
 空洞化の歯止めができるでしょう。

 「知者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ」、というのはビスマルク
 の言葉と伝えられています。高速道路に関する限り、残念ながら日本は
 歴史から学ばず、経済衰退という悲痛な経験をしています。

 既に歴史の中で、無料の高速道路がもたらす経済の地方分散と成長の
 効果は証明されています。20世紀に最初に無料の全国高速道路網である
 アウトバーンを作ったのはヒトラーのナチスドイツでした。アウト
 バーンによってドイツ全土が高速で結ばれ、ドイツは欧州一の経済大国
 になり、600万人の失業者が45万人にまで減りました。1930年代のこと
 です。

 その経済力を使って世界征服を企んだヒトラーを打ち破ったのが、アイ
 ゼンハワー連合軍最高司令官でした。戦後米国大統領となったアイゼン
 ハワーは、米国全土を結ぶ無料の高速道路網であるインターステートを
 作りました。

 「有料にすべき」とか「田舎には高速道路は要らない」という声に対し
 て、アイゼンハワーは高速道路のような国家の重要なインフラこそ、
 財政で整備し、無料で提供すべきだという信念を曲げませんでした。
 1950年代のことです。

《道路公団の借金を返す手段はたくさんある》
 しかも、アイゼンハワーは戦後米国の同盟国となった日本の経済力を
 強化して、共産主義陣営に対抗するために、名神・東名の高速道路の
 建設技術を供与し、名神の場合は資金の4分の1を、東名の場合は3割を、
 世界銀行を通じて融資しました。

 名神・東名の料金はその借金を返済するまで徴収し、返済が終われば
 無料公開の原則に戻るはずでした。ところが、1990年に世界銀行への
 借金返済を終えても日本の高速道路は世界一高い料金を取り続けて
 います。

 もし1990年に高速道路無料化を実現していれば、バブルの崩壊の痛手も
 経済衰退も、これほどひどくはなかったでしょう。痛い経験です。

 そもそも、道路公団の借金のほとんどは、民間から借りているのでは
 なく国が国債などで借金して、貸し付けたものです。借金が民営化
 されているわけでもないわけですから、本来の姿のままに、国の借金
 であるという実態に戻せばいいのです。国の借金の返済手段は、以下に
 挙げるように様々にあるのです。

 高速道路のユーザーが払い、一般道路の建設などに流用されている
 2兆円近い税金、特別会計に積み立てられた剰余金、無料化と同時に
 実行すべき高速道路会社の地域開発会社への転換とその上場益や納税、
 高速道路無料化の経済効果による税収増加分、などです。

 大都市区間の高速道路を混雑回避のために有料を維持すれば、財源も
 少なくてすみます。本当に経済を再建するつもりならできるのです。

《無料化後、世界最先端の高速道路に転換を》
 しかし、高速道路の無料化だけでは、20世紀の欧米にやっと追いつく
 だけです。日本らしく世界の最先端に立つためには、日本の高速道路を、
 世界最先端の環境と安全の高速道路に転換していかなければなりません。

 すなわち、電気自動車の充電装置、衝突回避のためのGPS(全地球測位
 システム)装置などを全高速道路に備え、そこから、ガソリンが要らず
 交通事故がない、21世紀の自動車社会を世界に先駆けて作るのです。
 自動車作りで世界一になった日本が、道路でも世界一になることが日本
 経済復活への第一歩になるでしょう。

 福田内閣の最後の経済政策の中には、かろうじて「国民生活や地域経済を
 支援する観点からの高速道路料金の効果的な引下げ」という一行が入って
 いました。どの政党であれ、この一行を拡大し、大胆に実行する政権が、
 日本経済再生の第一歩を踏み出し、長期政権の可能性を持つでしょう。


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┃山崎通信の最終号にあたりご挨拶
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 さて読者の皆様には長い間お世話になりました。今回で山崎通信はお休み
 させていただきたく存じます。

 約1年前、福田政権が発足した時の「首相交代の歴史的必然−80年代の
 成功体験から抜けだせない日本は取り残される」を書きました。今回
 書いたことと趣旨はほぼ同じでした。東京一極集中という、80年代に成功
 した国土と経済のままで、地方からの経済改革を怠れば、政権は交代
 せざるを得ないと論じました。

 そして、1年後に、同じ趣旨で、首相交代について論じることになって
 しまいました。

 その間、世界はサブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅
 融資)問題と石油や一次産品の価格上昇によって、大きなダメージを
 受けています。一方、先進国の不況に対して新興国の経済成長は多少
 スピードダウンしたとはいえ止まりません。ところが、新興国の株式や
 不動産は、先進国以上に大きく下がり、いわば投資の振り出しに戻り
 ました。

 そして、去年までは無視されていたような、日本の技術と企業と人材が
 世界の注目を集めています。混乱と恐怖の陰で、次の新しい世界経済の
 動きが始まっているのです。日本経済にとっては、最高の機会が訪れたと
 言っていいでしょう。

 ビジネスマンとしての血が騒ぎます。日本とアジア、そして、世界を
 つなぐチャンスは今だ、そんな思いで仲間たちとビジネスを始めました。
 とても残念ですが、山崎通信執筆に十分な力が残らなくなってしまい
 ました。愛読していただいた読者の皆様には申し訳ありません。

 ただ、本の執筆は続けようと思います。それまでの世界と日本についての
 思考の集大成として、『米中経済同盟を知らない日本人』を昨年出版
 しました。また、高速道路を中心とした日本の経済と政治の諸相について
 は今年3月に『道路問題を解く』に書きました。世界経済の変化について
 は、今年7月に『次のグローバル・バブルが始まった!』を書きました。
 さらに、これからの日本はグローバル経済の中でどうすべきかについて、
 今執筆中です。

 本が発売になる時やイベント開催時など、機会をみて皆さんにご連絡を
 差し上げるようにしたいと思っています。

 これまで「山崎通信」をご愛読いただき、本当にありがとうございました。
 これからも、国民の一人として、折に触れ発言し、また、仕事をして
 まいります。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 
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┃サイト「Voice of India」にコラムが掲載されました。
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 インドと日本の2国間関係がより密接になってきた昨今、私たちはインドと
 日本の適切な情報の必要性に気づきました。

 そのニーズに応えるために、私がアドバイザーを務めるインドセンターの
 リーダーシップにより、インドのビジネス・社会・政治・経済・文化・
 スポーツ・観光・教育などの最新ニュースをはじめ、インドの基本情報、
 コラム、社説などを提供するバイリンガル・ウェブ・マガジン、ヴォイス・
 オブ・インディア(Voice Of India、VOI)というサイトが作られました。

 このサイトに私のコラムが掲載されましたので、以下にご紹介します。
 
 ○『インドと日本のパートナーシップの未来』
 http://www.voiceofindia.co.jp/content/view/1649/62/
 是非チェックしてみてください。

 英語版もございますので、ご友人などにも紹介していただければ幸いです。
 "India, Japan-Perfect partners for future world"
 http://www.voiceofindia.in/index.php?option=com_content&task=view&id=2271&Itemid=62


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