暑さがやわらいできましたね。『山崎通信』第13号をお届けいたします。

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____山__崎__通__信____________2004.8.31_第13号
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┃夏の終わりに
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 スポーツが熱くしてくれた夏が過ぎていきます。

 アテネでは史上最高のメダルラッシュで日本選手が大活躍でしたね。
 卓球の愛ちゃんの老練とも言える戦いぶりには一番びっくりしました。
 少子高齢化の時代をはね返すようなアスリートたちの大活躍を見ていると、
 「日本の元気は必ず復活する」と教えられたような気がします。

 高校野球では、駒大苫小牧が北海道勢として初めての優勝を成し遂げました。
 「甲子園」は世界中で日本だけのもの。ふるさとを最も感じるのが高校野球
 ではないでしょうか。私も中学生のころに、あの江川卓投手に地元福岡の柳川
 商業が立ち向かうのを、カチワリ氷を片手に必死で応援したものでした。

 同じ野球でも、東京の1チームだけが勝ち続けることが繁栄の道、と錯覚して
 衰退の道をたどりはじめたプロ野球とは大きな違いですね。そろそろプロ野球
 の世界にも「どの地方も主役」という考えが定着しないものでしょうか。

 今回の騒動では、不祥事企業と共通するような顧客不在、従業員不在、説明
 責任不在、社会的責任(CSR)不在の姿勢が見え隠れし、情けないと思う
 ばかりです。相撲に次ぐ国技といってもよい野球は国民のもの。密室と談合の
 中で決められないはずです。お金を出したいという人を、理由も明らかにせず
 門前払いするのであれば、資本の論理ですらありません。社会的責任をはたす
 ためにコミッショナーという制度があるはずですから、オープンな議論と公正
 中立な審査を行うべきではないでしょうか。そして、どの地方にもチャンスが
 あり、かつ、郷土の誇りとなる野球に生まれ変わってほしいし、プロ野球の
 衰退で高校野球までなくなる日を見たくはないものです。

 サッカーのアジアカップでは、強烈な敵意に囲まれながらも日本が優勝しま
 した。むかしサッカーをかじった者として、大変な精神力だと感動しました。
 地元中国のサポーターがフーリガンと化して大規模な反日行動を展開したこと
 には、世界中から非難の声が上がりました。こうした行動には、中国での
 政治的な自由や表現の自由の抑圧、あるいは貧富の格差に伴う不満など、中国
 自体の問題も反映しているのかもしれません。もともとサッカーが観客を興奮
 させるスポーツであるということもあるかもしれません。

 しかし、私は、「パンドラの箱が開いた。」という恐れも感じました。乱暴
 狼藉を許すわけにはいきませんが、重慶の住民がテレビに向かって叫んだ、

 「我々が投げているのはペットボトルだ。
 日本が落としたのは爆弾じゃないか。」

 という言葉は重いものでした。ヒトラーがゲルニカを無差別爆撃してピカソ
 が怒りの絵を描く前に、日本が世界初の無差別爆撃で重慶の何万もの市民を
 殺したことを知りました。大東亜戦争、太平洋戦争で殺されたアジアの人たち
 は2,000万人にも達するそうです。

 確かに、政府間の謝罪はなされ、未来志向の関係が必要とされていると思い
 ます。でも、日本人の歴史物語は『坂の上の雲』で止まったままではない
 でしょうか。そこからなぜ悲惨な敗戦にいたったのか、多くを語り考え行動
 するのを避けてきたのではないでしょうか。受験で必要な歴史の知識は、
 せいぜい明治まで。昭和の歴史については空白ではないでしょうか(もち
 ろん、半藤一利さんの『昭和史』や齋藤健さんの『転落の歴史に何を見るか』
 などすぐれた本は多くありますが)。

 目をそむけずに殺された側に立って歴史を認識し、謝罪を行うのは大変
 なことです。しかし、「自らの過去の非を認めて建設的関係を忍耐強く築き、
 しかし、相手の横暴な部分には毅然とした態度を示す。」という、難しい
 課題に、日本人が長い道のりをかけて取り組む時が来たのではないでしょう
 か。今年フィナンシャルタイムスが行った調査でも、中国におけるネット
 世代の日本嫌いの割合は驚くほど高くなっています。

 かつて友好的だった日本とアメリカの関係が1920年代に急速に悪化した時
 には、アメリカでの有色人種移民の差別と日本の強引な大陸政策が重なって、
 日米双方の国民レベルでの敵意が急速に高まり、マスコミがその敵意を
 あおりました。そんな愚を21世紀に繰り返せばアジアの時代どころでは
 ありません。

 一方、かつての日本が、少なくとも結果としては、ヨーロッパの植民地支配
 を追い払いアジアを解放した、という側面も事実です。その面を重視して
 くれてきたのが、世界第二の大国であり静かに驚くべき改革を成し遂げた
 インドではないでしょうか。

 この夏はインドを訪ねました。

 また、ミャンマーでは、まさに『ビルマの竪琴』のようにジャングルに
 倒れた日本兵の供養が営まれるのに参加する機会を得ました。アメリカと
 中国との戦争を勝ち抜いたベトナムにもうかがいました。

 この旅を通じて、日本の近現代の歴史も1842年のアヘン戦争に始まる、
 欧米によるアジア侵略のさまざまな出来事の連続の中で考えなくては
 いけないこと、そして、相手の立場に立った上でアジアが建設的に結び
 つく必然性があることを感じました。確かに違いはあります。歩み寄る
 必要は大いにあります。しかし、お互いは驚くほど補い合えることも見えて
 きました。

 日本のすばらしさも感じました。どんな地方に行こうと文明生活があること、
 社会的政治的経済的平等が確保されていること、そうした反映を平和の中で
 築き上げたこと、この経験こそがわれわれの貴重な財産だと感じました。


 蛇足です。
 弘法大師の後をたどる、という宿願を果たされた方の意気に感じ、中学生
 以来ですが頭を丸めてみました。もともと大してないオツムでしたが、
 インドやミャンマーの仏跡を訪ねるのになかなか気持ちいいものでした。
 ついでに生えてきたひげもしばらくそのままにしています。ご容赦願います。


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┃「おぴネット」プレオープンサイトが9月1日(水)にオープンします!
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 山崎養世が発起人を務める「おぴネット」の本格オープンに先立ち、プレ
 オープンサイトが9月1日(水)にオープンします。同日、記者発表を
 兼ねたフォーラムが開催されますので、ご都合のよろしい方は
 ぜひおいでください。

 開催日時 :2004年9月1日(水)14:00〜16:00(13:30開場)
 場  所 :国際文化会館
       〒106-0032 東京都港区六本木5-11-16
       電話:03-3470-3211
        http://www.i-house.or.jp/

 プログラム:・代表幹事 日野原重明 挨拶
       ・「おぴネット」趣旨説明
       ・サイトデモンストレーション
       ・意見交換会

 「おぴネット」は、「自らの意見・考えを効果的に伝達したい、
 グループで活動したい」という個人、団体のためにインターネット上の
 「場」(コミュニケーション・インフラ)を提供します。

 プレオープンサイトはこちらからご覧いただけます<9月1日(水)より>
http://www.opinet.jp/

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● 次号は2004年9月中旬にお届けいたします。どうぞお楽しみに!

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