関係者 様

木々の新緑が春光に映える季節となりました。皆さんご活躍のことと存じ
ます。『山崎通信』第39号をお届けいたします。

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____山__崎__通__信____________2007.4.20_第39号
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┃G7が決めなかったこと
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 中央銀行の総裁は言葉だけで意思を伝えるわけではありません。言葉は
 むしろ目くらましに使われることも多いのです。「市場との対話」は
 しばしば市場との化かし合いです。言葉だけでは中央銀行の意思を見誤る
 ことがあります。

 言葉よりも正直に語るのが、イールドカーブと呼ばれるものです。
 日本語では利回り曲線とも言われるもので、左端に一番短い金利、右端に
 一番長い金利を置いてその間の長さの金利をたどっていって描くカーブです。
 中央銀行が変更できるのは、短い金利であり、長い金利は市場で決まる
 ことがほとんどです。

 いまのアメリカのイールドカーブは、バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)
 議長が決められる最短のFF金利が5.25%、それに対して10年国債の金利は
 4.7%程度。短い金利のほうが高いのです。この状態を逆イールドとも
 言います。銀行やトレーダーがお金を借りて長期国債を買っても、国債の
 値段が上がらなければもうかりません。市場で決まる長期金利より、
 バーナンキ議長が決める金利のほうが高いのですから、議長の意思は金融
 引き締めです。経済を冷やしたいという気持ちが表れています。

 でも、アメリカの景気を引っ張ってきた不動産市場は変調が続いています。
 何しろ90年代の頭からアメリカの不動産は上がり続けました。湾岸戦争の
 ころ2ベッドルームで50万ドル程度だったニューヨーク(マンハッタン)
 のアパートが、いまでは300〜400万ドルにまで上がったといいます。
 下がっても不思議とは思えません。信用度の低い人向けの住宅ローンの
 焦げ付きも始まりました。これから数年は不動産の低迷が続き、その分
 消費が下がる。すると自動車など日本製品の売れ行きも鈍るとも予想
 されています。

 ところが、バーナンキ議長は引き締めを続けています。物価がじりじりと
 上昇を始めたからです。中国やインドの成長は止まりません。ユーロが
 対円で最高値になっても、ヨーロッパの景気は好調です。アメリカも、
 減速気味でも失速はしていません。一番の出遅れである日本も、低速飛行
 ながら経済成長が続いています。

 そんなときに、G7に7カ国の中央銀行総裁と財務大臣が集まりました。でも
 そこには、世界経済の最大の成長エンジンであり、いまや世界一の外貨
 準備を持つ中国も、それに続くインドもメンバーではありません。主役が
 二人いないのです。20年前のプラザ合意の時には、世界一の債権国で
 あった日本の存在は希薄です。

 G7が終わっても、バーナンキのイールドカーブもユーロに対して安値を
 続ける円も変わりませんでした。中国の為替も変わりませんでした。
 
 中国と世界の成長の最大のからくりが、世界から経済制裁された1989年
 の天安門事件当時と比べ、対米ドルで半分くらいに安くなった人民元に
 あることは、拙著「米中経済同盟を知らない日本人」で説明いたしました。
 世界経済の高度成長も、各国の中での格差の拡大も、資源と環境問題の
 悪化も、相当部分は安い人民元にその源があります。それなのに、
 G7では中国と本格的な議論もしませんでした。アメリカだけでなく、
 中国に進出した国にとって、安い人民元は中国との共通の利益ですから
 当然といえばそうです。議論を避けたいのは中国だけではありません。
 かつて、激しく不均衡の責任を追及された日本とは違います。G7が
 アクションを起こさなかったことが、世界の株式市場を安心させました。
 今の成長パターンは続くと見込まれたのです。

 でも、なにもG7は名誉の椅子ではないでしょう。世界の経済に影響を
 与える主要国が、危機管理をする場です。中国発のミニミニ・クラッシュ
 に見舞われた今年こそ、どうやって中国そしてインドをGのメンバーに
 するのかを真剣に話し合うときのはずでした。危機が発生しないと
 そんな事態にはならないのでしょうか。


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┃記事掲載のお知らせ
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 お手にとってみていただければ幸いです。

 ○日経公社債情報 2007年4月2日号
  「07年度の市場と経済を占う 株価上昇局面続く
                米住宅・中国に不安材料残る」

 ○Voice 2007年5月号
  「膨張する大国」の仮面を剥ぐ 
   チャイナ・ウォッチャーが伝える日本人の知らない真実
  『上海株暴落後のさらなるクラッシュ』


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 ●次号は2007年5月下旬にお届けいたします。どうぞお楽しみに!

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