関係者 様

寝苦しい夜が続いておりますが、皆様お元気でいらっしゃいますか。
『山崎通信』第43号をお届けいたします。

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____山__崎__通__信_____________2007.8.6_第43号
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┃微分が大切
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 2月末に続いて、日本では選挙直前の7月末に、世界の株式市場が暴落しま
 した。何が起きたのでしょうか。大胆にいえば、ヨーロッパや日本以外の
 アジアのほとんどの主要国の株式では、ごく正常な現象です。
 買いすぎて上がりすぎたものは、利益を実現するために売られ、下がるから
 です。市場は非対称的なものです。上がるときはゆっくり、下がるときは
 一気に動きます。買うときは恐る恐る、逃げるときは我先に、というのが
 人なのでしょう。

 むしろ、去年の5月までが異常でした。中国やインド、そして日本まで含めた
 アジア、アメリカ、ヨーロッパ、さらには、トルコ、ロシア、ブラジル、
 アラブ諸国、世界中の株式市場がほぼ一本調子で上がり続けました。
 しかも、石油も1999年の1バレル10ドルそこそこの水準から80ドル近くまで
 上がり続けました。それなのにインフレは起きませんでした。世界の企業の
 収益は爆発的に増加を続けました。なぞのような世界経済の上昇が続いた
 のです。中国へのアメリカ企業の生産移転を先駆けに、先進国の企業が
 労働と不動産コストがはるかに安い途上国に生産を移転して、大幅なコスト
 ダウンを実現したからです。アジアはもちろん、東欧、ロシア、ブラジルと
 いった地域もこの21世紀型のグローバリゼーションに参加しました。
 インフレが起きないから、世界の金利は低いままでした。「米中経済同盟を
 知らない日本人」で説明してきた新しい世界経済です。

 なぞがわからないと言ったグリーンスパン、それを引き継いだバーナンキ、
 ドルの金利を司るアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)の議長たちは、
 それまでアメリカの金利を連続17回も上げ続けました。といっても、5.25%
 までです。80年代初の20%に比べるべくもありません。金利上げをストップ
 したのは、去年の6月についに世界の株式市場が大幅に下がったからでした。
 アメリカの引き締め策が弱い国から効いてきたのです。一番弱い経済が日本、
 その次がアメリカです。

 日本株は、2月末直前の高値をついに抜くことなく、選挙の前に下落しま
 した。ヨーロッパやアメリカ、アジアの株式が2月末の暴落前の水準を
 大きく上回ったところから下げたのに比べれば、日本株の弱さが際立ち
 ます。日本の為替も弱くなりました。円は、世界の通貨全体に対しては、
 すでに20年ぶりの安値を更新しています。国際収支の赤字が続くアメリカ
 のドルでいえば120円内外と強く見えるのに惑わされがちですが、円は
 ユーロやアジア通貨に対しては大きく下がっているのです。

 日本はかつての一億総中流の全国参加型経済から、人口減少の中で、
 グローバルな大企業に成長を依存する東京集中の経済に変わっています。
 一方、町村地域、つまり過疎地域での消費は大きく減少しています。
 地方経済の縮小、財政の困窮化、そして夕張に見られるような、住民サービ
 スの低下での過疎の進行、という悪循環を生んでいます。
 トヨタやキヤノンや商船三井や小松製作所やファナックのような海外の売り
 上げのほうが多いグローバル企業が多い日経平均に比べて、国内の消費に
 支えられた企業が多い新興市場が低迷するのも、もはや日本の国内経済が
 重症の二極化現象を起こしていることを反映しています。しかし、かつて
 国土の均衡ある発展を唱えた自民党政権は、有効な対策を見出せないで
 います。

 アメリカは、あまりの低金利に支えられた不動産バブルの破裂によって、
 経済全体がスローダウンしています。不動産を担保にして借り入れをして
 きた人たちにとっては厳しいときが来ました。といっても、海外からの
 資金流入に支えられていますから80、90年代のような金融制度全体への
 影響は起きていません。ただ、消費が鈍っていくことが予想されています。

 日本からはよく見えませんが、世界の市場を動かす陰の主役は途上国の
 為替になりました。昨年からの重要な転換は、ユーロだけでなく、中国、
 インド、トルコ、ブラジルなどの途上国通貨が円やドルに対して、上昇を
 始めたことでした。70年代のオイルショックはもちろん、10年前のアジア
 危機でも、途上国の通貨は先進国通貨に対して暴落しました。
 いまは、逆の現象が起きています。正常化のプロセスです。とりわけ、
 世界から孤立し外貨がなかった天安門事件当時から、世界一の外貨準備を
 持つにいたった去年まで為替が対ドルで半分に安くなった中国の人民元が
 歴史的な転換点を迎え、上昇基調に入ったのが大きな影響を与えています。
 ドルや円での途上国での生産コストが世界的に上昇を始め、進出企業の
 輸出採算が悪化し、世界の物価と金利に緩やかな上昇圧力がかかる一方、
 円やドルからの途上国の為替や株や不動産への投資収益が上昇することを
 意味します。世界の資金は、今後ますます途上国に向かうでしょう。
 中国などは輸出型から内需型の成長に経済の力点を移すでしょう。
 その流れに乗れなければ、グローバル企業は取り残されます。

 日本はどうするのでしょうか。大企業がグローバル化するだけでは
 国民生活が安定しないことは明らかになりました。地方が自立して発展し、
 国民全体が参加でき、息長く成長する経済はどうすれば作れるのでしょう
 か。政治が必要とされる由縁です。


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 ●次号は2007年9月上旬にお届けいたします。どうぞお楽しみに!

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