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____山__崎__通__信_______________ 2006.9.19_
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 関係者 様

 号外をお送りいたします。
 
 お知り合いの方にも、このメールを転送いただければ幸いです。

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┃遺産相続について
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 安倍政権が誕生します。

 いまとなっては、当然にも見えます。自民党の総裁候補のうち、安全保障の
 問題を正面から取り上げ、憲法の改正にまで踏み込んだのは、安倍氏しか
 いなかったからです。

 5年前に小泉政権が誕生したときの国民の関心は、命の次に大事なお金
 でした。バブルの泥沼から日本を変える指導者を求めました。

 いまの関心は、命そのものに移りました。不安が膨らんだからです。北朝鮮
 による国民の拉致と核武装の計画、中国と韓国での反日キャンペーンと領土
 問題での一方的行動、さらにロシアによる北方領土の居座り。日本は敵意の
 海に囲まれていると感じる人が増えています。

 世界全体の危険も高まりました。イラク、イラン、パレスチナ、アフガニス
 タン、パキスタン、さらにはベネズエラなど、これまでのアメリカ中心の
 国際秩序に反旗を翻す動きが勢いを得ています。

 本当に安全保障のリスクが高いのか、憲法改正が必要か、必要としたら
 どこを変えるべきか、それはここでは論じません。ただ、世の中の関心が
 低いころから、拉致問題をはじめ安全保障の問題を訴え続けた安倍氏の
 道のりは、郵政民営化を訴え続けた小泉氏が総理になった経路に似ていなく
 もありません。

 一方、民主党の小沢党首も考えの一端を明らかにしました。安全保障に
 ついて違う考えを論じ、また、国の仕組みを日常生活に近いところは大幅に
 地域に任せることを提唱しています。極端な格差が東京とそれ以外に
 広がっていることを考えれば、これもまた重要な提案でしょう。

 新政権は真空の中に生まれるのではありません。小泉政権の遺産を良くも
 悪くも引き継ぎます。小泉首相は何を約束し、何を残したのでしょうか。

 政権をとったときに小泉首相が最重要課題として約束したのは、不良債権
 問題の解決でした。この約束を小泉政権が果たしたことは、繰り返しになり
 ますが、大いに評価すべきです。もっとも、政府が銀行の損をかぶったわけ
 ですから、国債の発行枠を30兆円に抑えるという、まるで心臓を切るが血が
 出ない、というベニスの商人に等しい約束は破られました。それでも、民間
 経済は借金地獄から抜け出しました。

 そして、いよいよ小泉首相はライフワークである郵政民営化を実行しました。
 選挙にも大勝しました。約束を果たしたのでしょうか。
 
 小泉首相と30年前の田中角栄首相には共通点があります。斬新な経済政策を
 引っさげて登場し、政権にあるうちは指導力を発揮しました。しかし、
 結果は、日本経済は志とは反対方向に進みました。

 90万部近く売れた30年前の「日本列島改造論」を読み返してください。
 そこで訴えたのは、過密と過疎の解消でした。農業の株式会社化や環境を
 守る都市計画など、今でも新鮮なアイデアが盛り込まれています。しかし、
 結果は、天才田中角栄が作り上げたシステムによって、東京一極集中は
 加速し、国家の借金は史上最悪のレベルに達しました。

 小泉議員が松沢成文議員とともに1999年に書いたのが「郵政民営化論」と
 いう本です。これも勇気あるすばらしい本でした。財政赤字の原因は、
 郵便局だけにあるのではない、借金をいくらでも繰り返す特殊法人、そこに
 お金を貸す大蔵省、寄生する業界や官僚や政治家に真の原因があると喝破し、
 郵政民営化によってこの仕組みをぶっ壊すと宣言しました。お金を流す郵貯
 は小さくする、特殊法人の借金を返して国全体の借金を減らす、それに
 よって財政を再建する、というのが郵政民営化の最大目的のはずでした。
 結果はどうでしょうか。

 民営化されるのに、郵貯は今の形のままで拡大する方針です。民間銀行には
 ない定額貯金も増やすそうです。財投債という特殊法人のための国債も買い
 続けるでしょう。そうすれば、郵貯自体が財政破綻の元凶になりかねません。
 将来、金利が上がり、持っている国債が値下がりしたところへ定額貯金の
 解約が増えれば、大きな損が出るのです。この損を、貯金者でない国民も
 負担することになるのです。

 特殊法人の借金返済も進みませんでした。最大の特殊法人であった道路関係
 四公団は、40兆円もの借金は切り離して国民のものにし、サービスエリアの
 飲食やショッピングを独占できるおいしい民営化会社になりました。借金は
 45年かけて返すそうです。小泉首相が余っているから他の事に使え、と指示
 をした年間10兆円にもなる自動車ユーザーからの税金は、結局、今まで
 どおり一般道路に使われます。そのうちの3兆円は高速道路のユーザーが
 払ったものです。せめてその分で高速道路の借金を返せばいいのに、金利が
 低いいま国債に借り替えて返していけば金利が20兆円も少なくて済むのに。
 そして、高速道路は田中角栄首相が約束したように無料開放できるのに。
 小泉首相はしませんでした。30年前に田中角栄首相が作った道路の税金を
 無駄遣いする仕組みを引き継ぎました。

 片道3000円のアクアライン、5450円の本四架橋はそのままです。片や、首都
 高速はいくら走っても700円です。高速道路は、田中角栄首相の約束に
 反して、東京一極集中を進めました。東京は安くて便利な定額制、地方は
 使えば使うほど高い従量制。どちらがいいかはブロードバンドでも実証
 されたではないですか。かくて使う人のない高速道路の借金はこれからも
 膨らむでしょう。

 一方で、いままで地方を支えてきた中央からのお金はこれから減ります。
 美しい国土を守るお金も足りなくなるでしょう。地方は不便でコストが高い、
 住む人が減り会社も出て行く、財政がさらに厳しくなる、東京との格差が
 広がる、という悪循環に陥るでしょう。

 小泉政権で国債は290兆円以上増えました。税収は増えたといっても年間
 50兆円ぐらいしかありません。今から30年後ぐらいに、小泉首相は、
 借金を増やし財政を破綻させた元凶として記憶されかねません。
 ちょうど日本のバブル体質の罪を田中角栄首相がしょわされたように。

 安倍首相が引き継ぐ日本国政府は、本業が少し好調だからと巨大な借金を
 返さないバブル企業のようです。バブル企業の存在を金融庁も産業再生機構
 も許しませんでした。こういう企業は金利が上がればひとたまりもありま
 せん。いやおれは政府だ、金利は低く抑えられる、と言っても限界があり
 ます。

 くりかえします。まず、郵貯は小さくしましょう。そして、道路財源で
 高速道路の借金を返すところから始めましょう。副産物として、高速道路
 網は無料にできます。新しい道路を作るよりも経済効果がありますから、
 道路予算は削れます。もう予算をばらまかなくても、地方からの成長が
 始まります。

 今は高くて使えない高速道路を、地方の人たちが自由に使えるようになり
 ます。毎日の仕事や生活でのお金と時間の大幅な節約になります。地方に
 行くのも旅をするのも安く簡単になります。そのうち地方に引っ越す人や
 会社が沢山出てきます。ショッピングセンターや病院や学校も引っ越して
 きます。土地のコストが東京とは比べ物にならないくらい安いからです。
 便利になって引越しは加速します。団塊の世代も満員電車から解放されて
 みれば、地方に住みたいと考えだします。地方が便利になり、豊かになり、
 税金を払います。財政は改善します。地方分権とか道州制とかも現実味を
 帯びてきます。

 無料の高速道路が、国力を増強し文明を広げることは、歴史が証明して
 います。塩野七生さんの読者であれば、古代ローマ帝国が張り巡らせた
 8万キロ(日本の高速道路の10倍)の馬車専用のローマ街道がヨーロッパと
 アフリカ全域の広大な帝国を結び、300年にわたって平和と繁栄をもたらし
 たことはご存知と思います。古代ローマに学んだヒトラーは、アウト
 バーンという近代国家で初めて無料の高速道路をドイツ全土に作り、ばら
 ばらだった地方を結びつけ、当時600万人はいたとされる失業者をほとんど
 いなくなるほどに減らし、ヨーロッパ中に戦争を仕掛けました。ヒトラー
 を破ったアイゼンハワーは、アウトバーンに驚嘆し、大統領になったとき、
 アメリカ全土に無料のインターステート・ハイウェイを作りました。カリ
 フォルニアやテキサスなどが大きく発展し、アメリカはニューヨーク中心
 の経済から、全国どこからでも発展できる経済に変わりました。1950年
 から89年のアメリカの生産性向上の4分の1がインターステート・ハイ
 ウェイによってもたらされたといわれています。

 そのアイゼンハワーが、冷戦時代の同盟国としての日本を全面的に援助
 してできたのが道路公団であり、名神・東名の高速道路でした。名神・
 東名は、世界銀行からの借金を返したらタダにする約束でした。その約束
 を破って料金を取り続け、それをばらまく仕組みを作ったのが田中角栄
 首相でした。小泉首相は民営化という永久有料化の道を選ぶことによって、
 ぶっ壊したはずの田中角栄政治の後継者になったのです。だから東京一極
 集中も引き継いでいるではありませんか。安倍政権では、東京から金を
 ばらまきたいという人たちが再び台頭することでしょう。

 無料の高速道路は、国土と経済力の根幹にかかわる大政策です。郵政民営
 化などとは比べものにならないほど大事なのに、特殊法人のちっぽけな話
 としか捉えられないから、景気が上向いても東京と地方の格差がなくなら
 ない理由がわからないのです。羽田からアクアラインで20分にある木更津
 の土地が一坪5万円程度に放置され、一坪7千万円もする銀座の土地に群が
 る。それでいて、日本はコストが高いからと、中国に出て行く。これを
 ばかばかしいことだと思わず、変えようとも思わないうちは、日本の本当
 の復活はありえません。美しい国土は荒廃を続けるでしょう。
   
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