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____山__崎__通__信_______________2005.04.22_
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 関係者様

 号外をお送りいたします。

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┃靖国神社と蒙古塚
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 いよいよ始まったのだろうか。

 今年最初の山崎通信(1月11日配信「大乱が始まるのか?」)では、2005年
 は中国が最大の波乱要因となる可能性について触れました。さらに、1月
 10日発売の『中央公論』2月号収載の「やがて中国バブルの崩壊が始まる」
 では、今年は反日と日本製品ボイコットが過激化し、それが日中経済のみ
 ならず、世界の経済と安全保障にまで及ぼす危険性について、さまざまな
 角度から論じました。世界の資源の限界、アメリカ経済の限界、インフレ
 と高金利が並存するスタグフレーション時代の再現、グローバル化による
 危機の連鎖の構造、などの世界が抱える問題。そして、中国自体のバブル
 経済、耐えがたい貧富の格差、市場経済と一党独裁の覆いがたい矛盾、抑え
 つけられた国民の不満。そのゆがみから生まれる奔流が、反日という出口
 に殺到する危険。その危険を自ら招き寄せ、事ここに至ってしまった中国
 政府と日本国首相。危機を呼ぶ材料には事欠かない状態です。さらに、
 中国からの資金の引き揚げを招きかねない中国元の変動相場制への移行を、
 アメリカ大統領が唐突に求めました。いよいよ中国バブルの崩壊という
 パンドラの箱が開こうとしているのでしょうか。

 中国の政治体制からすれば、反日の暴力行為は即刻中止させられるはず
 ですし、日本は世界に訴えるべきです。そして、これから主要国と中国が
 協力して、中国のバブル経済のリスクを管理する体制を作り上げられれば、
 石油ショック以来の世界恐慌からはまだ引き返せるはずだと信じたいです。
 その後に、中国社会の民主化と情報公開は避けられなくなるでしょう。
 (危機はどのように回避しうるのかについて、上記論文でも論じたのですが、
 さらに詳しくまとめて新たな形で提案する予定です。英語でも発信して
 いきたいと思っています。)

 しかし、お金と経済だけでは解けないものが横たわります。

 先日、羽織袴をはいて夜桜能の火入れ奉行という大役を、生まれて初めて
 仰せつかりました。たいまつに火を受けて、篝火をつけます。靖国神社境内
 の見事な満開の桜の下です。舞台で演ぜられたのは、死者の魂の劇でした。
 素人にも、能面が動くと見えるほどに狂おしさが伝わってきました。

 日本は不思議なところです。征服者の神だけではなく、反逆者や被征服者、
 あるいは無念の死を遂げた人を神として祭るところも多いです。平将門、
 大国主命、そして菅原道真などの神が良い例です。荒らぶる死者の魂を
 鎮め、平和を祈願してきました。その意味でいえば、戦争指導者として
 非業の死を遂げた方々をも鎮魂することは、日本的なものといえないの
 でしょうか。祭られる死者の幅は広いです。私の出身地である福岡県の糸島
 半島には、かつて元の軍勢が上陸しました。嵐によって元軍は壊滅し、
 生き残った者の多くも切られました。その時の元軍の死者を弔った場所が、
 いまも蒙古塚として残ります。日本を征服したかもしれない異国の死者
 であっても、当時の日本人は立場を超えて弔ったのです。そして、日本は
 長く和の国であり続けました。

 東洋でも、長く和は尊ばれてきました。日本国ができて以来、漢民族の王朝
 や朝鮮民族が日本を侵攻したことはありません。紀元前の秦の始皇帝の軍隊
 は、19世紀のナポレオン軍に勝っていただろうといわれるぐらいですから、
 歴代の中国に日本を侵略する軍事力がなかったわけではないでしょう。
 そんな力があっても侵攻してこなかったのは、隷属支配を覇道として卑しめ、
 徳による王道支配を尊ぶ、東洋の伝統のおかげではなかったのでしょうか。

 しかし、19世紀のグローバリゼーションは、長く平和であったアジアに達し
 ました。植民地支配をビジネスモデルとするヨーロッパ帝国主義に、アジア
 は襲われました。東洋の伝統に安住していた中国は、列強の食い物にされ
 ましたが、ヨーロッパ帝国主義のビジネスモデルをいち早く身につけた日本
 は急成長し、ついには朝鮮半島を植民地にし、次に中国をも勢力下に置こう
 としました。西洋の覇道の伝統から見れば必然だったかもしれませんが、
 東洋の伝統からは大きく外れてしまったのです。そして、実に多くのアジア
 の人々が犠牲になりました。1000年たっても消えない事実です。

 日本の死者を弔うことは、日本人としての道でしょう。そこから進んで、
 アジアで犠牲になられた方々の霊を慰め、アジアの平和のために努めること
 を誓うのは、日本が本気でアジアの中で生きていくための第一歩ではない
 でしょうか。そのために、例えば、アジアの犠牲者を慰める「アジア慰霊の
 日」といったものを設け、毎年各国の首脳や遺族関係者を日本にお招きし、
 日本の反省の気持ちを定期的に伝えてはどうでしょうか。また、アジア各所
 においても、そうした慰霊の試みはできないものでしょうか。あまりに悠長
 に聞こえるでしょうか。

 和魂洋才、精神の東洋といった言葉は半ば死語と化してしまいました。
 しかし、侵略者であっても死者を弔ったかつての日本人の精神は、高貴では
 ないでしょうか。蒙古塚に学ぶとすれば、当初は罵倒の言葉を浴びせられ
 ても、自らの責任でアジアの死者への礼を尽くすことが、日本がすべきこと
 に思えてなりません。そこから初めて、かつてアジアが直面した歴史の困難
 に思いをはせる、という共通の理解が生まれるのではないでしょうか。


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