山崎 Voice Now
【第10話】一時的措置のはずの有料制 2004年06月03日更新

どうして日本の高速道路は有料なのか。そして、高速料金は世界一高いのか。それをひも解くには、「そもそも何故、有料制となったのか」について振り返る必要がある。

道路公団が誕生し、道路特別措置法(特措法)が施行された1956年、日本には高速道路を造る財源に乏しかった。
日本の高速道路建設は、当時、インターステート(高速道路)を造り始めたアメリカの指示を受けて始めたものだった。
アメリカは、ガソリン税を導入し高速道路建設の全てを税金で賄っていた。日本はアメリカよりも前の1952年にガソリン税を導入していたが、道路財源は200億円足らず。それでは、東名・名神高速道路が完成するまでに23年分もの財源を要してしまう。早く高速道路網を整備したかった日本は、世界銀行から借金をし、アメリカから技術を得て、財政投融資資金(郵貯を原資とした大蔵省(現財務省)からの借金)も利用して道路建設を行うことになった。

特措法の料金制度とは「償還主義」といって、あくまでも、借金を返済するまでの制度だった。当時の世銀はアメリカの資本がほとんどで、技術も資金も提供しているアメリカにとっては「担保付き融資」を進めたいところ。そこで、償還主義には路線ごとの料金収入によって確実に借金を返済させようとする狙いがあった。高速道路を造り終え、その路線を造った分の借金を返済するまでは料金によって返済し、完済すれば無料開放する約束だった。

しかし、名神・東名の建設費用は4600億円だったにもかかわらず、実際に名神・東名から徴収した料金はこれまでで7兆6000億円に上る。借金は、料金徴収によって1990年には返し終わっているのだ。それなのに、何故、今もなお料金を取り続けているのか。特措法の通りなら、バブルが崩壊した頃、既に、名神・東名は無料になっていたはず。本当は、一時的措置だった有料制が、今のように永久有料制となったのは、1972年、時の首相であった田中角栄氏が「料金プール制」という制度を作ったためだった……。

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【第22話】審判とプレイヤーは別に
【第21話】公団廃止、職員はどうなるの?
【第20話】広がる交通手段
【第19話】無料化が生活大国を作る
【第18話】無料化は農林水産業復活の切り札
【第17話】無料化の経済効果
【第16話】年金・簡保への影響なし
【第15話】今がチャンス、国の肩代わり
【第14話】連結決算で財政再建も
【第13話】どうやって高速道路を無料にするの?
【第12話】アクアラインが無料になれば‥
【第11話】法律を無視して作ったプール制の弊害
【第10話】一時的措置のはずの有料制
【第9話】米英独は高速無料で公団もないって知ってますか?
【第8話】料金と税金の二重取り
【第7話】公共事業と政治家
【第6話】経営多角化という独占
【第5話】民営化のからくり(4) 詐欺まがいの上場
【第4話】民営化のからくり(3) 公団の粉飾決算
【第3話】民営化のからくり(2)‐II 借金の怖さ
【第2話】民営化のからくり(2)-I 吸収できない40兆円の借金
【第1話】民営化のからくり(1) 借金の飛ばし